I.C

インフォームドコンセント(Informed Consent) インフォームドチョイス(Informed Choice)という言葉を聞くようになって久しい。
医療の現場で、医師が患者に十分の説明(病状、治療法、効果、副作用、代替療法等)を行い、原則患者自身が、自らの意志によって治療法を選択、もしくは拒否することです。
大学や実際の現場で長い訓練を受けた医師と患者の間で、当然知識量の差が生じる為、医師は十分の時間を取り、患者が理解できるように説明することが求められます。
患者も完全に受身になるのではなく、説明を精査し、また自ら調べて最終的に自らの意志によって、治療を選択もしくは拒否します。

私たちが行っているリフォームの仕事は、時に家の治療に似ています。
依頼を受けたご家庭を訪問し、家の抱えている“症状”を、施主様からのヒヤリングや、現場調査から“診断”します。
大学や現場で専門の訓練を受けてきた弊社のスタッフと、建築という分野では、ほとんど経験がない施主様との間で、当然知識や経験の差が生じます。
それで私たちも、十分の説明(既存の潜在的な問題点、プランの効果、マイナスの面、法的要求、代替プラン、費用等)を、施主様に分りやすい言葉で説明する責任があります。
施主様も自らプランを精査し、建築やインテリアの本等で勉強しながら、自らの希望をより明確にすることにより、専門スタッフとの打ち合わせ時に、より具体的な要求をすることができます。

先日先輩と、このような話しになりました。
実際の現場調査、既存設計図書等の精査から、施主様がどうしても取り除きたいと望んでおられる柱や壁を取り除くのが、この場合賢明ではないという判断をしたものの、施主様がやはりどうしてもその柱、壁等を取り除くことを要望された場合、どうするかということです。 
長い経験のある弊社管理建築士の大西さん(私達は親しみと敬意を込めて、大西隊長と呼んでいる)は、「その場合、そのような工事が不可能でなくても、賢明でない理由をきちんと説明して、必要であれば工事をお引き受けしない選択肢を取る勇気が必要です。」と言いました。
会社なので、きちんとした仕事をして、利益を生み出すことが必要です。 でも私たちがしている仕事は命の左右に直結することのある仕事です。 経験ある先輩の短い一言は、改めてそのことを銘記させてくれました。
MT