土と木

20代始めころ、西岡常一著 「木の命木の心」という本を読みました。
代々、法隆寺の大工で、法隆寺金堂などの修復をした最後の宮大工といわれている人物です。
飛鳥時代の建築、また樹齢、数百年、また千年を超える木と仕事をした人物です。



その西岡棟梁が、今でいう高校を選ぶとき、(当時は小学校卒業後、丁稚、工業学校、農学校、師範学校などに進んだ)法隆寺大工だった西岡棟梁の祖父は、建築を教える工業高校ではなく、農業高校へ進学させました。
しかも、机の上での勉強が主な農業課程ではなく、土をさわり米を育てる「百姓仕事」の実習時間の長い農業課程を取らせました。
西岡棟梁はその当時、自分がなぜ建築課程ではなく農業課程に進学させられているか分かりませんでしたが、お祖父さんにただ「土の命をしっかり学んでこい」といわれて、農業高校に進学しました。



西岡棟梁は、祖父が自分を農業高校に行かせた理由が分かったのは、自分が棟梁になった時だったと書いています。 
農業高校で学んだ土質や林業と、法隆寺大工の口伝「堂塔建立の用材は木を買わず山を買え」の意味が、棟梁になって合致したということです。
西岡棟梁の祖父は大工の本質を孫が理解するには、「建物」だけではなく、建築を可能にする土を学ばなければならないということを教えられました。
それで西岡棟梁の農学校時代の3年間は、大工の修行を始めてすぐに役立つことではなかったかもしれませんが、不必要なまわり道などではありませんでした。
より重い責任を果たすようになって必要になることだったからです。



POWER HOUSE の設計も建築以外のことにも興味を持ち、学ぶようにしています。
より重要な事を成すためには、物事のより広くより深い理解が必要です。
そのような視点で学ぶべき事柄を見分け、意欲的に学んで行きたいと思います。
MT